2016.02.03 Wednesday

激写の再現 —『康ちゃんの空』復刻のお知らせ—

 この記事を読んでいる方々の中には、『康ちゃんの空』をご存じの方もいると思います。「ああ、足立区役所に金井康治君の花東小への転校を求めて行った時の写真集ね」っていう人も、実際に「その現場に行ったよ」という支援者もいるでしょう。
 この金井康治さんの転校要求運動が、希望すれば普通学校に入れる可能性を現在のように広げたのでした。その意味で多くの皆さんに読み続けてほしい本なのですが、出版元の創樹社は既にありません。なので、今回著者の楠山忠之さんの同意を得て、全国連絡会発行主体として千書房から復刻出版されました。
 金井康治さんは1983年に花畑北中学校に入ることができました。弟や地域の子どもたちと一緒に学校に行きたいと、城北養護学校から花畑東小学校への転校を願い出てから実に6年の月日がたっていました。しかし、希望していた花東小学校にはわずかな「学習参加」(1981・5・22〜6・19)を除いて入ることができませんでした。
 教育行政ってほんとにケチで権威的です。中学校に入れるのなら2年前の「学習参加」に続いて小学校に入れてくれれば良かったのです。しかしそのまま入れたのでは、いかにも圧力に屈したようでかっこ悪いとか、前例になったら困るとか、いうことなのでしょう。
 日本の教育法制度では、当時も今も障害があったら必ず障害者専用につくられた特別支援学校に入らなければならないとはなっていません。特別支援学校は障害児に対し普通学校に「準ずる教育を施す」となっているだけです(学校教育法72条)。
 もちろん、だからといって勝手に選べるわけではなく、ある程度の障害があれば教育委員会と保護者との「合意」という形でいずれかの学校に入ることになります。その結果、引っかかった子どもの半分くらいは普通学級、もう半分くらいが特別支援学校・学級に入ります。それで保護者の方には「うちは選んで特別支援学校に入った」と胸を張る方もいるのですね。
 しかし、どこに入るにしろ決定するのは教育委員会であって、就学先決定は「措置」という行政処分です。これは障害のない子も同じです。親の意見は参考意見に過ぎないのです。「参考」でも聞かないよりまし、いや「かなりの進歩だ」「闘いの成果だ」という意見もあるかもしれません。
 個々の場合については独自の経過と当事者の努力があるので、「選んだ」「進歩だ」「成果だ」といって構わないと思います。しかし、社会の仕組みとしてそれでいいのか、となると話は別ではないでしょうか。
 第一にある程度以上の障害があると見なされた場合このような別ルートをとること、第二に最終決定権が行政にあることは、簡単に認めて良いこととは思えません。
 第一は障害者差別の疑いが濃厚です。障害があるということで他の者から区別することは差別であると日本も批准した障害者権利条約に明記されています。第二は、個人の人生の重要な選択を行政に決定させていいのか、ということです。それでは徴兵制と同じではありませんか。
 金井康治さんの闘いは、この二つの問題への問いかけであり、主要な当面の相手は第二の行政の決定権であったのです。
 この写真集に激写されている足立区役所のバリケードはその象徴です。障害者差別でなくてもたとえば沖縄の辺野古のように、行政にたてつく者は粉砕する、という行政権力の意思表示であるのです。金井康治さんはそこに風穴をあけたのです。
 復刻に当たっては、この本は写真集ですので、どの程度この権力の意思表示を鮮明に再現できるのか心配でした。新聞の写真をコピーするとブツブツ(モアレ)が目立って見にくくなります。そういうことになるのではないかとどきどきしていましたが、近頃のスキャナ技術はすごい! ほとんどモアレが気にならないのです。原本と比較しても95%のできで迫力満点。
 そしてこの写真集は中学入学決定の1年半前で終わっています。「成果」報告ではないのです。闘かったがどうなるのか先が全く見えない、康治さん本人にはとても苦しい時期でした。だからこそ、今でも切実に私たちに問題を訴えかけてくる本です。まだ本書を見たことがない方はもちろん、読んでいる方もぜひ手にとって見てください。
 お問い合わせは全国連絡会事務局へお願いします。全国連からお買い求めの場合には会員割引があります。(定価2000円)
※この記事は全国連会報2015年12月号340掲載の記事に若干の加筆をしています。

 

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